わが国に誕生した世界的に知られる森田療法の創始者である森田正馬博士の弟子として長年にわたり森田療法を実践してこられたのが高良武久博士(東京慈恵会医科大学名誉教授)です。高良博士は、1940年に東京都新宿区中落合に、森田入院療法の施設として高良興生院を設立しました。高良武久博士は当時、東京慈恵会医科大学の精神神経科教授でした。
興生院は、第二次世界大戦の米軍の大空襲により、一部を焼失したこともありました。しかしその後も、治療者と患者が起居をともにする家庭的森田療法の原型を守る病院として、診療を続けました。高良武久博士は、森田療法を学ぶ医師たちのために、ここを研修の場として開放していました。興生院での研修によって森田療法を身につけ、後継者として育っていった専門家のかたがたは数多くいます。
高良博士が1997年に亡くなられた後、高良興生院の跡地の一部が、高田馬場で精神障害者の支援に取り組んできた「かがやき会」に寄贈され、そこに精神障害者の就労センター「街」が建設され2000年より活動が開始されました。
この建物の一部に、高良武久博士のご遺族から寄贈された貴重な図書などの資料を保存し展示する一室を設けることが提案され、高良博士に指導を受けた人たちが中心になり、「高良武久・森田療法関連資料保存会」を組織することになりました。記念室の誕生に至り、その活動を引き継ぐ形で「高良興生院・森田療法関連資料保存会」が、新たにこの場を森田療法の普及と研修の拠点とし、活動を継続しています。